花丸紋とは
花丸紋とは、植物を円形に図案化したもので、花の丸、花丸文とも呼ばれます
単体の植物で構成されたものもあれば、松竹梅や日本の国花を組み合わせた桜と菊など、二つ三つのの植物を組み合わせたものもあり、能装束などの伝統芸能の衣装から、今日の着物や帯にいたるまで、伝統的・古典的な趣のある文様です
日本刺繍を始めた頃、教本に載っていた写真を見たときからいつかは刺してみたい…!と憧れていた図案たちを刺繍したものをいくつかご紹介致します^^
春と夏のモチーフの花丸紋をご紹介した記事もありますので、是非併せてご覧下さい.·˖*
秋の花丸紋 紅葉
秋の風物詩として真っ先に頭に浮かぶもののひとつに紅葉がありますね^^真っ赤に染まった紅葉ももちろん素敵ですが、また青々とした若い葉っぱも個人的には好きです
お花ではないですが、秋と言えば…!ということで秋のモチーフには紅葉を選びました
葉っぱは割り繍いで立体感を
日本刺繍では紅葉は割り繍いで刺繍することがいちばん多いかなと思います
葉っぱ一枚を鋭角ごとにパート分けをして、中心から左右に分け半分ずつ繍っていきます
針目づき(糸と糸の間の隙間)が葉っぱの主脈になり、糸の流れにより全体が立体的に見えます^^
駒取りと菅繍いでアクセント
葉っぱの数が多かったので、一枚は菅繍い(とじ押さえ)という平行に糸を渡してぞべ糸で留めていく技法(手前)と、駒取りでは葉っぱの形を線繍いしていく技法(奥)を使い、全体のアクセントにしてみました
菅繍いは一掛け金糸を一本取りで渡したので、留めるのが大変でした…笑(上の写真はまだ留める前です)
枝の駒取りは太さを調整しながら
枝も駒取りで刺繍しています
通常辛めに撚った絹糸か三掛けの金銀糸をぞべ糸で留めていきます
2本1組を駒取り1回、更に1本足すことを駒取り1回半と呼びます(写真は駒取り1回半の途中、手前が駒取り1回です)なかなか紛らわしい数え方です…
全体を見ながら枝の太さを調整しています( ´ ▽ ` )ノ
紅葉に使用した技法まとめ
紅葉 | 割り繍い | 平糸 |
駒取り1回 | 撚り糸(辛) | |
菅繍い(とじ押さえ) | 一掛け金糸 | |
枝 | 駒取り1回(一部1回半) | 撚り糸(辛) |
今回の紅葉は他のモチーフに合わせてピンク系を入れてみましたが、少し後悔しています…笑
違和感がすごい笑
次回は若々しい青の紅葉を刺繍したいと思います!
割り繍いは糸の角度の調整など進め方が少し難しいですが、平糸で繍うと写実性も高いし光が当たる角度によっても印象が違ってくるので、絹糸で刺繍するかも日本刺繍独特の美しさが際立つ技法かなと思います^^
冬の花丸紋 椿
春夏秋冬の花丸紋を刺繍した中で、冬の椿がいちばん気に入っています!
椿は花の散り方が縁起が悪いという理由で着物などの柄には避けるという方もいらっしゃると伺ったことがありますが、個人的にはその散り方がが潔くていいなあと思ったりしています^^
花は糸を重ねて
椿の花の繍い方は工程が多く、
- 花芯部分の下地
- 手前の花びら3枚
- 奥の花びら2枚
- しべ
- 花びらの中央線
の順で刺繍しています
しべは下地を繍い切った後に相良繍いと引っ張りとじ、葉っぱは横向きに繍い切った後中央に引っ張りとじでラインを入れています
中央のラインが花びらの形に自然に繋がるように繍うのが難しい…
花びらはふんわり感を出すために甘めに撚りをかけています
葉っぱは平糸でツルッとした質感を
葉っぱはそれぞれの向きに合わせて斜めに繍い切った後、こちらも引っ張りとじで主脈を作ります
ひっぱりとじは金銀糸又は辛めに撚った糸をぞべ糸で留めます
絹糸を撚らずに平糸で繍うと、厚みがありツルッとした光沢のある椿の葉っぱの質感が良く出たかなと思います^^
蕾はグラデーションに
蕾は撚り糸で縦に繍い切っています
配色をグラデーションにしたらとっても可愛くなりました(*´꒳`*)
満開で見頃ろのお花ももちろん好きですが、花開く前の生命力溢れた蕾を刺繍するのが好きです
今回の花丸紋シリーズで、桜・杜若・椿の刺繍をしましたが、全て違う技法でそれぞれ気に入っています.·˖*
枝は辛めの撚り糸で力強く
枝は辛めに撚った絹糸でまつい繍いで繍っています
枝や松の葉など質感の硬いものは通常辛めに撚った絹糸や金銀糸を使います、反対に花びらなど柔らかいものは甘めに撚ります
モチーフに合わせて糸を撚るのは難しく、技術面と併せて「糸撚り三年」(糸を撚ることだけでも習得するのに三年かかる)言われています…((((;゚Д゚)))))))
椿に使用した技法まとめ
しべ | なり地引き | 平糸 |
相良繍い | 平糸 | |
花びら | なり繍い | 撚り糸(辛) |
花びら中央線 | 引っ張りとじ | 撚り糸(辛) |
葉っぱ | 斜め繍い切り | 平糸 |
引っ張りとじ | 撚り糸(辛) | |
蕾 | 縦繍い切り | 撚り糸(普) |
今回ご紹介して椿の花丸紋はとっても気に入っていて、この刺繍をきっかけに椿が大好きになりました
亡くなった祖父が庭で育てていた椿をとても大事にしていたので、祖父のこともよく思い出すようになりました
わたしの刺繍もどこかの誰かの心の片隅にそっと残ってくれるといいなあ…そんな作品が作れるよう、これからも精進して参ります(*´-`)
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